エス17開発ストーリー
2世紀近く以前に自転車が発明されたとき、乗馬のスタイルがそのまま自転車の乗車姿勢に置き換えられたということで、今や常識的になった自転車の乗車姿勢にそれほどの意味(合理性)があるとは思えませんでした。
より安全で、より速く、そして楽しい自転車を考える中で、どうしてもこの乗車姿勢が気になりました。乗車姿勢を低くすることで多くの問題が解決できるからです。自転車が危険なのは重心が高いからで、転んだときはまさに、馬から落馬したようなもんです。また、自転車は1/2馬力ぐらいの人間が動力ですから、性能を上げるにはあらゆる抵抗を少なくするしかありません。空気抵抗は自転車の受ける抵抗の中で一番大きいといわれていますが、いまの乗車姿勢はまともに風に立ちはだかって走るのでとても人力を損しています。
そこで最初のスケッチが描かれました。(左図)。椅子に座ったような姿勢でそのまま前方に投げ出した脚の先にペダルがあるというポジションです。全長を普通車並みにするために、前輪は小径のものを採用。全体としてはくさび形で風を切り裂いてゆくイメージです。
■2006年夏
最初の試作車が完成しました。この一台が、「こんなの走るんかいな」という開発者の常識と偏見を完全に打ち砕きました。勿論最初に座席に座ったときやこぎだしの違和感はありました。しかし、5分、10分と試乗しているうちには通常の自転車のバランスの取り方と全然変らないことに気がつきます。いづれ、2輪の自転車は操縦者の重心移動でバランスをとっています。S-17はハンドルを座席付近に引き寄せたことで、主にお尻とハンドルで重心を移動することができ、普通の自転車と同様のコントロールが可能です。そればかりか、重心が低く座席が後方に位置しているため、従来の自転車では味わえない、まるで、ゴーカートでコーナリングするような醍醐味を味わうことができます。これはスゴい。普通に走る上に、その気になって走れば高性能でファン・ツー・ライド。その後製品化に向けて開発が進んだことは言うまでもありません。
ハンドル位置のスタディとして、座席の少し前方にしたタイプも試作されました。この位置でもハンドルポストの回転軸を垂直にすれば重心のコントロールが容易にできることがわかりました。さらに座席付近に近づけた場合と大差がないことで、現在のアンダーシートタイプに落ち着きました。最初の試作車は前輪12吋からはじめ、この時は前輪16吋仕様としました。全体のバランスを考えて最終的には14吋とする予定です。
■エスにルーフをつける
(屋根)をつけることで全天候型の自転車が実現できます。通常の自転車に屋根を付けようという試みは過去にありますが、実用的ではなく今日でも普及にはいたっていません。s17は車高が低いので実用的な屋根をつけることが可能なのです。傘や雨合羽にさよならする日が遠くありません。